原作準拠(?)>シュウザー戦で「小此木の脳」の存在に狼狽えてほしい


「俺様の頭には、小此木の脳が埋め込まれてるんだぜ!」

―――ん…?
聞き覚えのある名が聞こえ、一瞬、振り上げていた拳がそのまま停止する。
いや、隙が出てはダメだ、気のせいだ。
「やれるのか?アルカイザーさんよ!?」
オレは構わずその拳をヤツの胴体に叩き込んだ。機械部分は火花が散り、
もうそう長くは持たないだろう。オレはトドメとなりうる技の組み合わせを逡巡する。
「ハハハ ハハハ!」
シュウザーはずっと高笑いしている。限界を迎えて笑う事しかできなくなったのだろうかと
思っていた。オレは構わずスカイツイスターを打ち込む構えに入った。
「ハハハッ、オマエ、聞きたくねえのか?[小此木博士]が何を吠えてるのか」
――! なんだって?
さっきのは聞き間違いじゃなかったのか。今度はハッキリと博士と言い切った。
それはオレの……いや、おかしい。
仮に本当に父さんの脳があるとして、それが機能してるならこんなことにはなってない。
『ウソだ』
無視するべきだったのに、いつのまにかオレは応対してしまっていた。
『あの博士の自我を持つなら、今の貴様達のような残虐な真似はしないだろう。
 デタラメも大概にすることだ』
オレは言いたいことを言い切り、高く跳んだ。そこにシュウザーの声を借りた何かが重なった。

[狼狽えるな、烈人]

――!?

[妻と藍子を、どうか、たのんだ…]

技を打ち込むために高く跳躍したはずのオレは激しく気を散らし、ただ落ちていった。
余計なこと、しやがって―――
「ハハハ!!やはり小僧か」
シュウザーの頭上へと無防備に落ち続けていたオレは着地前に腹を蹴り上げられた。
『…がぁっ!』
俯せに地面に叩きつけられ、勝ち誇った表情のシュウザーが背中を踏みつけてきた。
だがそんなことよりも他に気を取られ続けている。
……今のは本当なのか。
藍子の名を呼んでいた。
シュウザーは元々その情報を知っていただろうか。父さんが言ったのだろうか。
「ハハハ!![やめろ、やめろ]と大騒ぎしているぜ、ホラホラ、もっと見ろよォ」
シュウザーはさぞや面白そうにオレを踏みつける足に力を込めてきた。
『う、う……博士は、生きてるのか?』
「もちろんさ、今もオマエを見てんだぜ、面白ぇだろ」
……見てる…
なら、こんなみっともない姿じゃダメだ。
だけど―――
「どうするんだ?俺様を殺れば博士も同時にくたばるんだぜぇ!会いたくないのか!?」
会える……?どうやって。
そんな状態じゃ、もうムリじゃないか。
わかっているんだけどさ。
―――父さん……
『ぐあっ!』
ただ踏んでいるだけだったシュウザーが踵落としをしてきた。
「身内が関わってたら悪を叩けないなんぞ、ヒーローの風上にも置けねえじゃねえか、笑っちまうぜ小僧め。とっととくたばれ!」
ヤツが腕を外してクロービットを打ち込もうとした。オレは宙返りで飛び起きると
ソードでそれらを全て弾き飛ばした。
『そうはいかないっ!』
そうだった。今は、ヒーロースーツだ。
ごめん、父さん、ごめん――。
オレ、アルカイザーだ。烈人じゃない。

これは、人違いだ。

だから
『……さよなら』
―――ライジングノヴァ!
当初の予定とは違うが、剣を握っていたのでそのまま繋げた。充分にトドメにはなり得るだろう。
光が昇っていく。
その光にせめて照らされてくれと願った。
父さん、…父さん―――
「ハハハッ!!ざまあみやがれェェエ!!」
やられていながらにして何がざまあなのか、最後まで気持ちの悪い奴だ。
躯体が粉々に散っていく。
だが心なしか頭を潰すことが出来なかったようだ。髑髏のようにゴトリと落ちた頭の横に、
四つん這いに手を付いた。息が上がりバクバク速まる鼓動とは裏腹に、全身の力が抜けていく。
心の弱さを察知したのかそれとも無意識か、変身は気づくと勝手に解けてしまっていた。

そんな……待ってくれ、おかしいだろ……
父さんは……?オレの手で………

殺してしまった。……そんなことがあるか?

どうして?
全く理解できない。状況はわかるが心が拒絶していた。
最後にソードを握っていた右手が勝手にガタガタ震えだし、気持ち悪い。
『……う、…う……っ』
たったひとり取り残された冷たいアスファルトの上で、オレは咳込みながら涙を流した。
何分そうしたのか、何時間そうしたのかは後で振り返っても全くわからない。



「いたいた、あそこよ。おーい!無事!?」
聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。
ええっと名前、なんだっけ。アニーだ。
そういえば無我夢中で4人(2人と2体)ほどをビルの屋上に置いてきてしまったんだった。
彼らが近づいてくるのが見える。
――…頭がぼんやりしている。あの後、どこに行けばよかったんだっけ…。
「もうっ、ひとりでヘリに掴まってっちゃうからビックリよ、探すの苦労したわ」
「どうしたの?どこか怪我でも?」
蹲って動かないオレを不審に思ったであろうライザが反応した。だが返事をするのも面倒くさく、
オレは泣き腫らした目で宙を見つめていた。
キャアアァ!!なによこれっ」
耳に刺さる。アニーが横に落ちていた“頭”だけの存在に気づいて悲鳴を上げた。
「シュウザーは倒せたのね。それにしてもグロすぎでしょ!もう!心臓に悪いわ」
アニーは取り乱した様子でその“頭”を蹴り飛ばした。
『…! やめろっ、バカヤロウ!!』
オレはいつのまにか立ち上がると、アニーの腕を乱暴に引っ掴んで路面に投げ倒した。
あ……、違う……何やってんだよ、オレ。
「痛い!何すんのよっ、アンタどうしたの!?」
「レッドくん?」
『…ごめん、なんでもない、ごめん』
今転ばせたばかりのアニーの手を取ってそっと起き上がらせた。
そこで初めて彼女はオレの顔を正面から見たらしい。
「……泣いてたの?」
『なんでもないから。行こう』
戸惑う彼女らをよそに、クーロンの方角へと数歩踏み出す。途中で立ち止まり、振り返った。
…置けるような花なんてないからな。
「ん?」
さっき蹴られる前に頭があった辺りに戻り、使っていない腕輪を掴み、目を閉じて手を合わせた。
そばにコットンが寄ってきて似たような動作をした。
「な、なに、なにしてるの」
「なんかワケありでしょ。戻ってから聞きましょ」
ライザがアニーのシャツの裾を引きながら声を潜めて空気を読んだ。
『おまたせ、いこうぜ』
オレは頭を掻きながら彼女らの元に走った。

置かれた腕輪が月明かりにチラリと光った。





完全に投薬に慣れ切った頃に書き始めたもの。珍しく最初から最後までやや好き。
やりたいことを全部詰め込んだ上、自分自身のブレもあまり感じなかった。
神庭さんじゃないですか、今までどこ行ってたんすかみたいな感じ(古い知人しかわからん
ただ、若干このへんでアニーのCPスイッチ踏んでしまったようで、たぶん次回に影響してしまう。

そういえばヒーロー技ではなく「スカイツイスター」やら「ライジングノヴァ」なのは
実際に私がプレイしたとき覚えていた技かつ、ヒーロー技よりも与ダメがデカかったからです。
さらにライジングノヴァのエフェクトは光が昇るので都合よく情緒に喰われたよね。
しっかしなにこれヒーロー技要らんやないか。でも真アルフェニの準備は一応済んでる。


赤い狐と狸は何方

何年遅れなのかサガフロの二次創作サイト。 レッド推しだけど中の人のせいで色々おかしい CP…アニー攻?(19/05/31現在)